Aさんの父が亡くなりました。
亡父の所有名義の建物には抵当権が設定されており、債務は完済していましたが、その解除手続きのため銀行から相続人を決めてほしいとの連絡を受けました。
相続人は5人おり、亡父の相続に関する話し合いが行われました。本件建物及びその敷地は、亡父ではなくAさんがお金を支払い購入したもので、固定資産税も今までずっとAさんが支払ってきました。事情を知る他の2人の相続人は、「当然Aさんが遺産を取得する」と主張し、Aさんもそう考えておりましたが、弟のBは「名義が親父のものならば親父のものだ」と譲りません。しかし、母Cの面倒をみることを条件にBが納得し、遺産分割協議は一度整ったかに見えました。
ところが、いざ遺産分割協議書に判を押す段階でBが翻意し、話は再び振り出しに戻ってしまいました。やむなく、事情を知る相続人2人からAは相続分の譲渡を受け、ABCの共有名義で相続登記をし、抵当権を解除しました。
事実とは異なる登記の公示に困ったAさんは、当事務所の相談にいらっしゃいました。
本件土地はAさんがお金を出して購入したもので、本来Aのものです。土地建物代金の領収書も固定資産税の領収書も全てAが所持しており、Aが代金を支払った有力な証拠になると考え、真正な登記名義の回復を登記原因とする所有権持分全部移転登記請求調停を申し立てました。
調停を申し立てることにより、相続人間で曖昧であったお金の出所が明確になり、Aが代金を支払ったということはほぼ確実となりました。ただ、調停ですので、相手方が嫌といえば調停は成立しません。Aが所有権を取得するためには、まだ話し合いを進める必要があり、成立のためにはB及びCが納得する条件が必要でした。代理人の介入もあり、B及びCの本心も見え、条件が加えられ、調停は無事成立し、Aは所有権を取り戻すことができました。
このケースのように、所有者が事実と異なる場合には、真正な登記名義の回復を登記原因とする所有権持分全部移転登記が可能です。ただ、その真偽の判定は難しく、裁判所にもちこまれるケースがほとんどでしょう。
登記手続きを明確にしたうえで、裁判を行うことができる当事務所におきましては、裁判所での手続きもスムーズに行えます。登記での裁判をお考えの方も是非ご相談下さい。