Aさんは、昭和52年に購入した地目が山林の土地を売却することにしました。
売却するにあたり、土地の権利証がないことに気がつきました。
土地の売買による所有権移転登記はできるのでしょうか?
権利証とは、不動産登記法上は「登記済証」といいます。
登記済証は例えば所有権の登記名義人が売主として所有権の移転登記を申請する場合、登記名義人本人からの申請していることを確認する書面として法務局に提出することになっていることから、通称「権利証」と呼ばれています。
この登記済証は、所有権移転などの登記が完了すると、法務局から登記名義人になる者に交付された書面です(現在は、登記識別情報が通知されます)。
登記識別情報とは、所有権などの権利の登記が完了した際に法務局から買主等の登記名義人に通知される12けたの英数字の組合せからなる情報です。
現在は所有権などの登記が完了すると、上記の登記済証に代わり登記識別情報が本人確認情報として通知されます。
なお、登記識別情報が通知されていない不動産に関しては、過去に交付された登記済証を権利証として利用します。
登記済証または登記識別情報(権利証)は、不動産の所有権の移転登記などに法務局に提供することになりますが、権利証を提供することができない正当な理由があるときは、権利証を提供することなく他の方法により申請ができます。
具体的には、
なお、①事前通知は手数料はかかりませんが、②や③の資格者や公証人に本人確認情報を作成してもらう場合には手数料がかかります。
Aさんは登記済証に変えて本人確認情報を作成して法務局へ提出し、所有権移転登記申請をしました。
なお、Aさんからの質問として、権利証紛失による不正使用はされないかとのことでした。
紛失した登記済証を誰かが悪用、登記識別情報を盗み見られることについては、例えば所有権移転登記申請には、登記済証または登記識別情報のほかに印鑑証明書の添付が必要ですので実印や印鑑証明書をしっかり管理していれば、勝手に登記されません。
仮に所有権登記名義人でない者が不正な登記をしたとしても、その登記は無効かつ犯罪です。
しかし、登記済証または登記識別情報を不正取得した者が登記名義人になりすまして不正な登記を行う可能性がまったくないとは言い切れませんので、登記名義人の権利を防衛するため、不正登記防止申出の制度があります。
不正登記防止申出の制度は、不正な登記がされる差し迫った危険がある場合に申出から3か月以内に不正な登記がされることを防止するための制度です。
この制度は権利の移動を禁止する趣旨の制度ではなく、不正登記申請があった場合に本人に確認の通知が行くというもので自動的に不正登記申請を却下してくれるものではないですし、通知してくれるのも、申出から3か月のみです。
また、登記識別情報を紛失し、これが誰かに盗み見られた可能性がある場合などには、登記名義人又はその相続人その他の一般承継人の申出により、 登記識別情報を失効させる制度が設けられています(不動産登記規則第65条)。
ただ一度登記識別情報を失効させると復活はできないのでご注意下さい。