不動産の売買契約は、普通の人が一生に一度取引をするかしないかという大きな取引であるため、契約の際には売買契約書を作成します。
この売買契約書に不備があると、のちのトラブルの原因となりかねません。
ここでは、売買契約書で押さえるべき10のポイントについて見ていきましょう。
不動産売買の基本は当事者と対象物件ですから、これらの表示に誤りがあると売買契約そのものの有効性が問題となりかねません。
当事者は氏名と住所で特定しますが、未成年者の場合には法定代理人、法人の場合には代表者を確認のうえ、契約書に記載します。
売買物件も、登記事項を記載することにより特定しましょう。
売買代金は、売買物件の対象面積により左右されるため、面積を正確に把握することが非常に重要です。
登記簿面積が信頼できる場合はよいのですが、長年の間に増改築が行われ、登記簿の面積の記載と実際の面積が異なる場合には、実測をして実測面積を記載しておいた方が後々のトラブルを回避できます。
不動産の売買代金は非常に高額であることから、どのように売買代金を支払うかを事前に決めておくことが重要です。
通常、売買契約成立時に「手付金」と呼ばれるお金(下記4で説明します。)を買主が売主に対して支払い、売買物件の引き渡しや移転登記と同時に残金を支払います。
手付金の交付から不動産の引き渡しや移転登記までの間に、「中間金」という名目で売買代金が支払われる場合もあるようです。
手付には、
①契約を締結したことを示し、その証拠という趣旨で交付される「証約手付」
②手付相当額または倍額の損失を覚悟すれば、相手方の相手方の債務不履行がなくても契約を解除できるという趣旨で交付される「解約手付」(いわゆる年附没収、倍返し)
③買主が債務の履行をしない時に没収される、または損害賠償額の予定という趣旨で交付される「違約手付」
があります。
あらゆる手付が①の証約手付の性質を持ち、また、当事者間に特約がなければ②の解約手付と推定されます(民法557条1項)。
③の違約手付の性質を持たせるためには、当事者の特約が必要です。
売主または買主が契約の内容に違反した場合、債務不履行を理由に解除をすることができます。
解除の要件及び効果についても、契約書に記載しておきましょう。
不動産は高額であるため、買主は不動産ローンを組んで事実上代金を分割払いにすることが一般的です。
しかし、売買契約締結後にローンが組めないことが分かったり、不動産売買のために十分な額の借り入れができなかったりすることがあります。
そのような場合に備えて、買主が住宅ローンを組むことができなかった場合には、売買契約を解除する、あるいは当然に解除となる、という条項を入れておきます。
売買契約の後に、地震や火災等、何らかの理由で不動産が滅失または損傷した場合、その危険は所有者が負うとされています。
そのため、いつ売主から買主に所有権が移転するかは非常に重要な問題です。
一般的には、買主が売買代金全額を売主に支払ったときに所有権が移転する、とすることが多いようです。
買主は、売却物件を完全な形で取得したいと考えることが通常ですので、抵当権や賃借権等、所有権の完全な行使を妨げる権利は、売主が抹消する必要があります。
不動産には、1年を単位として固定資産税や都市計画税が課されます。
そのため、年度の途中で売買契約を行う場合には、公租公課の負担割合を定めておく必要があります。
一般的には、税金額を日割り計算したうえで、引き渡しの日を境に負担割合が定められることが多いようです。
売主がそれまで使用していた物件を売却する場合などには、エアコンなどの付帯設備に関する引渡しの問題が生じます。
売主が取り外して持ち出すのか、買主に引き渡すのかを、個々の付帯設備ごとに決めておきましょう。