契約は、申込者と承諾者の意思の合致によって成立します。
改正法では、改めて、第522条第1項でかかる原則を確認しています。
第522条第1項
契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
ところで、申込者と承諾者のそれぞれの意思表示の効力発生時期について、改正前民法は、隔地者(離れた場所にいる者)に対する意思表示の場合についてのみ規定をおき、意思表示が相手方に到達したときにその効力を生じるという、到達主義を原則としていました(改正前民法97条第1項)。
改正法では、隔地者に対する意思表示のみならず対話者(対面・電話など直接やり取りできる者)に対する意思表示についても、相手方に到達したときからその効力を生じるとして、意思表示全般の効力発生時期について、到達主義を採用することを改めて明らかにしました。
到達主義の原則からすれば、契約も、承諾の意思表示が到達したときにその効力が生じるはずです。
しかし、改正前民法526条第1項は、到達主義の例外として、隔地者間の契約は、承諾の通知が発せられたときに成立するとして、発信主義を採用していました。
隔地者間による契約の場合に、郵便により承諾の意思表示がなされることも多かった時代においては、取引の迅速性の要請から、承諾を発したときに契約が成立するという発信主義をとることに合理性があると考えられていたからです。
しかし、現代では、迅速性を望む場合には、電話、メール、FAX等を利用することができますし、あえて隔地者間であることに着目して到達主義の例外を定める必要性に乏しいといえます。
そこで、改正法では、到達主義の例外を定めた526条を削除しましたので、契約は、全て原則通り、承諾の意思表示が到達したときに成立するという到達主義によることとなりました。
改正前民法521条は、「承諾の期間を定めてした契約の申し込みは、撤回することができない。」と定めていました。
改正法では、承諾の期間を定めてした契約の申込みは、原則撤回することができませんが、申込者が撤回をする権利を留保したときは、撤回することができる旨を定めました。
第523条第1項
承諾の期間を定めてした申込みは、撤回することができない。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。
改正前民法524条は、「隔地者に対してした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない」と定めていました。
改正法では、承諾の期間を定めないでした契約の申込みは、原則、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができませんが、申込者が撤回をする権利を留保したときは、撤回することができる旨を定めました(525条1項)。
第525条
1 承諾の期間を定めないでした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。
2 対話者に対してした前項の申込みは、同項の規定にかかわらず、その対話が継続している間は、いつでも撤回することができる。
3 対話者に対してした第一項の申込みに対して対話が継続している間に申込者が承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。ただし、申込者が対話の終了後もその申込みが効力を失わない旨を表示したときは、この限りでない。