第465条の2
賃貸借契約の保証人が個人(法人ではないということ)の場合、保証債務の極度額を定めなければ、保証契約が無効となります。保証人が法人である場合には、極度額の定めは不要です。
極度額の定めにより、保証人が保証する金額が具体的になると、その金額に抵抗を感じ、保証人になることを避けようとする人が増える可能性があるため、今後は、家賃保証会社の利用が増えることも予想されます。
この点、家賃保証会社は、個人の保証人ではありませんので、極度額を定める必要はありませんが、家賃保証会社のほうから極度額や適用事項を制限してくることは考えられます。
契約締結時に、保証人の極度額についての確定的な金額の記載が必要となります。
賃料10か月分などという記載は、いつの時点のいくらの賃料を指しているのかが明らかであれば問題ないともいえますが、保証契約の有効性に疑義を生じさせないよう、100万、150万円のように、金額を明確に記載したほうが安全です。
極度額には、賃料の滞納はもちろんのこと、例えば賃借人がごみ屋敷状態にした場合の原状回復の費用や損害賠償など、一切の費用を含みます。
改正民法附則第21条第1項によると、「施行日前に締結された保証契約に係る保証債務については、なお従前の例による。」とありますので、改正前(2020年4月1日以前)に締結された賃貸借契約については、極度額を定める必要はありません。
それでは、改正前に締結された賃貸借契約が更新された場合には、極度額を定める必要があるでしょうか。
まず、そもそも更新後の賃貸借契約に保証人の責任が及ぶのかですが、この点については、原則として更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証人の責任が及ぶとされています(最判平成9年11月13日)。ただ、この点についても、契約書の中に明記しておいたほうが安全でしょう。
次に、更新後の契約に極度額の定めが必要かですが、
法務省の見解(法務省サイトに遷移します)によると、
更新後の保証債務については、改正法の適用があるとの見解を示しています。
判例が集積されていない段階においては、法務省の見解に従うのが安全ですから、賃貸借契約を更新する際には、新たに保証人の極度額を定めておくべきです。
ただ、「更新」には、合意更新、法定更新、自動更新等がありますし、更新の方法にも、主債務者である借主が署名押印して更新する場合、主債務者も保証人も署名押印して更新する場合、主債務者も保証人も署名押印せず自動更新する場合など、様々なパターンがあると思います。
この点、法務省が、どのパターンの時に、「更新」を新たな保証契約の合意だと考えて、改正法の適用があると考えているのかまでは不明です。文献を調べたところ、自動更新や法定更新には改正法の適用はないとする見解が多いとは思います。この点については、新たな情報が入り次第、更新していきたいと思います。