意思能力がない者がした法律行為は無効であることを明文化
契約というのは、例えば、売主の「この土地を売る」、買主の「この土地を買う」という双方の意思表示の合致によって成立します。ですから、赤ちゃんや幼児、成年被後見人など、そもそもこのような意思表示をする能力がない者は、自分では意思表示をすることができません。
これまで、民法上の規定はありませんでしたが、有効に意思表示をする能力(意思能力)を有しない者がした法律行為(契約など)は、当然の前提として、無効と解されていました。
近年、急激に社会が高齢化していく流れのなかで、認知症や病気のため判断能力が著しく低下したお年寄りが不当に不利益を被る契約をしてしまうことがないよう、保護していく必要性がますます高くなっています。
そこで、改正法では、明文で、意思表示を欠く法律行為については、無効であることを明らかにしました。
第3条の2‥法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為 は、無効とする。
※ここでいう「無効」とは、意思能力を有しない者の関係者からしか主張することができないと解されています。
法律行為に必要な意思能力の程度取引当事者の意思能力の確認は、絶対に欠かしてはならない宅建業者の基本的な義務です。
どの程度の意思能力があれば契約が有効となるのかについては、判断が難しいこともあるでしょうし、プライバシーの問題から、調査が難しい側面もあるかとは思います。
しかし、意思能力を欠き無効とされる場合、契約をした意思無能力者自身の落ち度が認められにくいため、 意思能力を欠いた者を保護する要請が強くなり、その後の転売行為の効力も否定されるなど、被害が拡大する可能性も十分考えられます。
宅建業者としては、複数人による質問を交えた面談を行う、介護認定を確認する、契約の目的を確認するなどして、慎重な対応が必要となります。