改正法では、多数当事者間の法律関係についてもいくつかの改正がなされました。
その中でも、賃料管理の点で、影響の大きい改正である「履行の請求」についてまとめました。
改正前民法458条は、連帯債務に関する「履行の請求の絶対的効力」について定めた改正前民法434条が連帯保証に準用されることを定めていました。
これは、債権者が連帯保証人に履行の請求をすれば、主債務者にもその効力が及ぶということを意味します。そのため、賃貸人が連帯保証人に賃料の請求をすれば、主債務者である賃借人にも時効の中断の効力が生ずることになります。
履行の請求に絶対的な効力が認められたのは、連帯債務者間には、主観的な共同関係が存在することが多いため、履行の請求に絶対効を認めるのが合理的な処理であると考えられたからです。
しかし、連帯債務者間に必ずしも主観的な共同関係が存在するわけではなく、同じく連帯保証人と主たる債務者にも、必ずしも主観的な結びつきがあるわけではありません。
それにもかかわらず一部の連帯債務者や連帯保証人に請求することによって他の連帯債務者や主債務者の知らないところで時効の利益が失われてしまうのは不合理であるとの批判がありました。
連帯債務について、請求の絶対効を定めた改正前民法434条を削除し、履行の請求について、当事者間に特段の合意がない場合には、相対的効力のみが生じることとなりました(441条)。
また、連帯保証についても、かかる規定が準用されますので(458条)、連帯保証人に対する履行の請求は、当事者間に特段の合意がない場合には、主債務者である賃借人には効力が及ばないことになります。
前述のとおり、履行の請求の相対効については、当事者間で特段の合意をすることができます。ですので、賃貸人の立場からすると、連帯保証人に対する履行の請求が、主たる債務者にも効力を生じることを合意しておくのがよいといえます。
また、連帯保証人が複数人の場合には、一人の連帯保証人への履行の請求が、主たる債務者のみならず、他の連帯保証人にもその効力が及ぶことを定め、合意しておく必要があります。
第441条
第四百三十八条、第四百三十九条第一項及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。ただし、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。
第458条
第四百三十八条、第四百三十九条第一項、第四百四十条及び第四百四十一条の規定は、主たる債務者と連帯して債務を負担する保証人について生じた事由について準用する。