依頼者:50代男性
相手方:50代男性(依頼者の弟)
依頼者様は、兄弟と互いに持分を持ち合っている2棟のマンション及びマンション敷地を、それぞれの単独所有にしたいとのことで、ご相談にいらっしゃいました。
弟とは長いこと協議を続けているが、不動産の評価で争いになって、膠着状態が続いているとのことでした。
依頼者様と相談し、協議での解決は難しいと判断し、共有物分割請求訴訟を提起することにしました。不動産の評価額が高い場合、共有物分割訴訟を提起する際に高額の印紙代がかかってくることから、依頼者様にとって共有状態を解消するメリットが高い不動産のみを対象として訴訟を提起し、その余の不動産は相手方に反訴を提起してもらう方針としました。
訴訟提起後、予想通り相手方も反訴を提起してきました。
本件の争点は、不動産の評価でしたので、早い段階で不動産鑑定士による鑑定を行うことが決まりました。
不動産鑑定が行われた場合、鑑定結果をほぼそのまま採用して和解もしくは判決となることが多いのですが、本件は、当事者双方が鑑定結果についての問題を指摘し、利回りや鑑定手法をめぐって、激しい争いとなりました。
その間、鑑定書が不動産鑑定士により2回修正されるという珍しいケースで、これが余計に争いを大きくする結果となりました。
本件は、税金的なメリットを受けるためには、和解で終わらせる必要がある事案でしたので、最終的には、裁判官の指揮のもと、調停に付し、不動産鑑定士の資格をもつ2名の調停委員に入ってもらい、調停委員の意見を聞きながら解決に至ることができました。
本件は、マンションの構造的にも、評価が難しい物件だったと思います。
不動産鑑定を行う場合、鑑定条件を詰めたうえで鑑定を実施するのが望ましいとは思いますが、対立が激しい事案では、争点と直結するような鑑定条件を決めることも難しいこともあります。
本件を解決するにあたり、5名ほどの不動産鑑定士の意見を聞く機会がありましたが、複雑な収益物件については、鑑定士によって鑑定手法や結論が大きく異なる場合もありますので、不動産鑑定の難しさを実感した事案でもありました。
また、共有物分割は、税金や登記についての検討も欠かせませんので、税理士や司法書士との連携において、弊所の強みが生かせた事案だと思っています。
約2年